その手に触れてみたい。
すぐ近くで感じる土方さんの温もりがとても愛しく思えて。
でも手を繋ぎたいなんて口にするのが
照れ臭くて恥ずかしくて躊躇われて揺れる袖を小さく握った。
「ほら」
すると足を止めて私の手を取る。
指が絡まって繋がる手。
「遠慮することはねえんだ」
離れがたい温もり。
「…はい」

*『手を握りたくてそわそわしている』『土千』






「今年も冬が来ましたね」
空から舞うのは白い雪。
厳しい寒さが今年もやってくる。
ふわりと羽織がかかり振り返れば土方の姿。
肩を抱かれそっと身を寄せる。
「初雪か」
「また無事に冬を越えましょうね」
「おまえがいるから大丈夫だ」
長い冬。その先に待つ薄紅の雪を遠く見て。
「はい」
微笑みあう初雪の日







手が絡む。ドキドキするその瞬間が好き。
だけど、繋いだまま伝わる温もりにどこか安らぐそんな時間がもっと好き。
大好きな人の温もりがこんなにも愛しく
こんなにも優しくこんなにも落ち着くのだと初めて知った。
土方さんあなたはどうですか?
一緒だと嬉しいなと残る温もりをぎゅっと抱き締めた







千鶴。
呼ばれた声に振り返った。
けれどそこにあの人はいなかった。
千鶴。
次に呼ばれた時振り返った先には昔とは違う出で立ちの変わらないあの人がいた。
「待たせたな」
「本当です。私はいつもいつも…あなたを追いかけて待つばかり…」
待ち焦がれた温もり。
「もう離さねえよ」
「私も離しませんから」







寒いといえばふわりと温もりに包まれる。
「こっちの方が暖かいだろ?」
いつだってそうして力強く愛しいその温もりが
いつだって体が熱くなるほど照れ臭く心が踊るほど嬉しい。
トクントクンと耳元で聞こえる歳三さんの鼓動が今一緒に生きてる証し。
「はい」
体を預ければ強くなる力が嬉しかった。

*






お茶を土方さんに持っていった時。
「千鶴手出せ」
言われるまま手を出すと可愛い細工の櫛。
「あの」
「いつもお前には色々頼んじまってるからその礼だ」
「…大切にしますね」
「あいつらには内緒にしとけよ?特に総司なんかにばれてみろ」
「ふふ、そうですね」
小さく笑い合って少し距離が縮まった気がした

*『「内緒だよ」と笑い合う』『土千』






いつまでもいつまでも一緒にいたいと願う度胸の奥がきゅうっと切なくなる。
幸せすぎて。
愛に満ちたこんなにも愛した人と暮らすこんなにも愛される日々が。
頬に涙が伝う。
次に触れたのはごつごつした優しい手の温もり。
涙をそっと拭う。
笑って見せて差し出された歳三さんの腕の中に飛びこんだ。

*






するりと落ちる衣擦れの音にすらぞくぞくする快感を覚えそう。
直に触れる歳三さんの体が熱い。
直に触れる歳三さんの吐息が私の体を熱くする。
「千鶴…愛してるよ」
拍動する私の心臓が一際波打って。
「…私も…愛してます…」
小さな声は届いた。
翻弄する口づけに身を任せるだけ。
魂ごと愛し合う悦びに。

*






ただ傍にいられたらいいと願ってた。
どんな形でも。
でも私はこうして今、隣で眠る土方さんの腕の中。
これから二人分の朝ご飯を作り…
「…ん?…千鶴?」
寝起きの抜けた土方さんの声。
最愛の女だと言われ、土方さんの妻となって
より色んな土方さんを見れるようになった。
「おはようございます」
幸せの朝

*






一つの傘に二人で入って距離がないくらいくっついて。
肌寒い日にはその温かさがいつまでも続いてほしいと思う程幸せで。
例えば今日みたいな冷たい雨の日。
土方さんの温もりとすぐ間近にある
柔らかな瞳と優しい微笑みが私の世界いっぱいに広がる。
恥ずかしい位の距離が本当は何より好きだった。

*






「どうした、千鶴」
土方さんの声ではっとして我に返る。
「い、いえ、なんでもありませんっ」
つい慌ててうまく言葉に出来なかった。
顔ごと土方さんから逃れるようにすれば
「そんなに俺に見惚れてたか?」
と耳の近くで囁かれた。
「わかってるなら聞かないで下さい!」
「おまえの反応が可愛くてな、つい」

*






クリスマスムード一色の街中につい胸が躍る。
「ったく」
小さなため息が近くで聞こえたかと思うとぐいっと引き寄せられて
「はぐれてもしらねえぞ」
しっかり腰を抱かれてた。
「土方先生とクリスマスを過ごせるのが嬉しくて」
キラキラ光るイルミネーション。
「俺もだ」
低い優しい声も私の心を輝かせる。

*






恥ずかしげに伏せられた瞳が
頬を撫で頤に当ててこちらを向かせると上目に色を含んで俺を見る。
静かに寄せれば遠慮がちに俺の着物を掴む手を
そのまま引き寄せて腕の中に閉じ込める。
凛としたしなやかさが可憐で繊細な花へと
姿を変えるその一瞬に狂うほどの愛おしさを感じる。
千鶴、おまえはなんて女だ。

*






「髪、伸びたな」
さらり腕の中の千鶴のリボンを解く。
艶やかな黒髪が背中に揺れた。
その一房に口付ける。
「綺麗になったな」
一度恥ずかしげに目を伏せられた目。
その目が不意に上がる。
「…ありがとうございます」
ふわりと笑う笑顔に目を奪われた。
「本当にいい女になった」
伸びた髪に指を滑り込ませた

*






少し熱っぽいかもしれない。
そう思った時にはもう遅かった。
「おまえ調子悪いだろ?」
「これくらい大丈夫です」
「悪くなったらどうするんだ」
「大したこ…きゃ!」
突然体が浮く。
思わずしがみ付いたら間近にある土方さんの顔。
「少しは甘えやがれ」
抱き上げられたと気付いた時優しい笑顔がそう言った。

*『お姫様抱っこしている』『土千』





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