「嬉しそうだな、千鶴」
「はい、お洗濯をするのに気持ちがいいですから」
二人の間を春の香がふわりふわり過ぎていく。
土方の優しい笑顔にはにかむ千鶴。
洗濯を済ませると柱に体を預けて座る土方の隣に上がる。
すかさず土方は肩を抱く。
パタパタ揺れる洗濯物。
桜の花弁が舞い落ちて二人の笑顔を誘った

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一時も離したくねえと思った。
気が付いた時には千鶴を腕の中に引き入れる。
「土方さん?」
いつ来ると知れない命の終わりに怯えているのか、
千鶴という存在が愛おしくて愛おしくてたまらねえ。
「どこにも行くなよ」
「…それはこちらの台詞たみです」
千鶴の手に力が籠る。
「離さないでくださいね、絶対」

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「いつか…先生のお嫁さんになれたらいいなって思ってたんです」
卒業式のその後、謝恩会を抜け出した。
プロポーズをした土方に、千鶴ははにかみながら涙を浮かべてそう笑った。
「私なんかでいいんですか?」
「お前がいいんだよ、千鶴」
涙を拭った手はそのまま小さな体を抱き寄せた。
「幸せになろうな」

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「お前はどれだけ俺を惚れさせれば気が済むんだ」
「そんな…私に言われても…」
熱い視線に耐えきれず私は顔を背ける。
「千鶴、こっち向けよ」
行為の後は妙に照れ臭かった。
「そんなお前がまた可愛くて惚れるんだがな」
ああどうしよう、甘い囁きに体が熱くなる。
いつもときめいて惚れ直すのは私なのだ。

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雪のような白い肌には俺が付けた赤い痕が幾つも咲いていた。
「あまり…見ないでください…」
顔を赤く染めて恥じらう千鶴があまりにも可愛くて仕方ない。
体を隠そうとする手をどける。
「隠す必要はねえぞ」
「でも…」
「綺麗だなぁって見惚れてただけだ」
更に顔が赤くなった。
「本当可愛いな、お前は」

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「千鶴ー、今帰った」
散歩から戻って声をかけると
千鶴が奥から飛び出してきて珍しく抱き付いてきた。
「千鶴?」
あまりない彼女からの行為に喜びたいが
どうも千鶴の様子がおかしい。
「すいません…急に怖くなってしまって…」
震えた声に全てを悟る。
「一人にして悪かった」
愛する女の想いが温かく沁みた

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「貴方のものになりたかったんです、ずっと」
初めてだった。
男の人に抱かれたのは。
恥ずかしくて怖くて嬉しくて幸せで愛しくて。
「安心しろ、お前はとうの昔から俺だけのもんだ」
「…はい!」
ずっと抱かれていたいなんて思ってしまう。
その腕にすがれば強い力に迎えられた。
「もう離さねえよ、千鶴」

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貴方が先に逝ってしまうこと。
あがらえない運命だと受け止めている。
それでも一分一秒でも長くと願ってしまう。
「歳三さん」
愛しいその人の優しい寝顔に触れれば溢るる涙。
ふいにぎゅっと強い力で抱き締められる。
「千鶴、俺はお前を手放す気はないぜ?」
貴方が大好きなんです。
私も手放せない位に

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手を繋ぐ。
それだけの行為なのに私のずっと奥まで熱くする。
「歳三さん…」
「どうした?」
「あの…」
気恥ずかしくて口にすることが出来ない。
武骨な歳三さんの手が私の髪を払う。
「言ってみろ」
「いえ…ぎゅっとしてほしいなって…」
恥ずかしさに目を伏せると力強く抱き締められた。
「可愛すぎるぞ」

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いつか貴方が去り行くその日まで私は貴方に一番近いところにいたい。
だから「夫婦に…ならないか」
珍しく照れ臭そうに貴方が言うからポロリポロリ涙が溢れた。
「千鶴?」
「…あまりにも嬉しくて…」
どうしたらいいかわからない。
「幸せになろう、千鶴」
抱き締められた温もりに満たされる。
「…はい!」

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