春の日の午後。
千鶴と土方は所用で街に出ていた。
その帰り道、ふと、土方が足を止めた。

「土方さん?」

どうしたのだろうと合わせて足を止めた千鶴に、土方は

「ちょっと待ってろ。」

それだけ言うと、近くの店に入っていった。
少しすると、傘を片手に土方が戻ってきた。

「一降り来そうでな。」

そう指し示す先はどんより曇った空。

不思議そうな千鶴の表情に何を言いたいのかわかったのか、
土方は困ったように笑いながら優しく答えた。

「風も湿ってきてるしな。昔とった杵塚だよ。」

百姓の生まれだからな、と言えば、千鶴は納得したように笑った。

「そういうのわかるって凄いですよね。」
「そうか?」

満更でもない様子で土方は返すと、千鶴を促し歩き出した。

そんな二人と同じように京の街を歩く数名の平隊士のがいた。
非番の彼らは久々の京の街を楽しんでいた。
すると、ポツ…と雨粒が一人の隊士に落ちる。

「雨か?」

そう言ったのもつかの間、ざぁっと音を立て、瞬く間に本降りとなった。

「やべえ、おい雨宿りするぞ!」

隊士達は、駆け足で近くの商屋の軒下に避難した。

「まさか降るとは思わねえよ。」
「通り雨だろうな。」
「じゃあ止むまでここにいるしかねえか。」

口々に突然降り出した雨に文句を言っている時。
とある隊士の言葉が止まる。
雑踏の中、誰かを見つけたのか、
一点を見つめてるようだが、その様子はあまり晴れない。

「……なぁ、あれ副長じゃねえ?」

その名を口にするのも憚られる、まるでそう言わんばかりに、他の隊士達に告げた。

「副長だと?」

雑踏の中、一際目立つ男がいる。
皆、その男へと視線を向けた。
整った顔立ちをして、長い漆黒の髪を後ろで揺らし、見慣れた紫の着物。
新選組隊士であるものが誰もが恐れるその人を見間違う筈がない。

「ああ本当だ、ありゃ副長だ。」

軒下で雨宿りをする隊士達は、萎縮するように、その姿勢を正した、直後

「…いや、本当に副長か?」

誰だろうか、そんなことを言い出した。
何言ってんだと他の隊士が言いかけた時、垣間見た土方の様子に言葉を失った。

「あんな副長見たことねえぞ。」

隊士達の視線の先にいるのは、
いつも隊士達が目にする眉間に皺寄せ眉吊り上げ厳しく物を言う土方ではなく、
優しく笑う土方の姿であった。

「隣にいるのは……雪村か?」

隊士達がいる場所へと近付いてきて初めて、
桜色の着物と赤い結い紐が目に入り、<土方付きの小姓として常に
幹部の、土方の傍に控え、雑務をこなす千鶴がいることに気が付いた。

「本当だ、雪村だ。」

隊士達の横を通る二人は、仲睦まじく話していた。
どうやら軒下で雨宿りをしている隊士達には、二人は気付いてないようで。

「土方さん、濡れてますよ。
もう少しご自分の方に寄せて下さい。私は大丈夫ですから。」
「何言ってんだ。おまえ風邪ひきやすいだろうが。」
「でも、土方さんも多忙のお疲れがあるんですから。」
「余計な心配すんなってんだ。俺はそんなにやわじゃねえし、
元々の体力は千鶴よりあるんだよ。
第一おまえに倒れられたら俺が困る。ほら、ちゃんと入れ。」

千鶴が土方の方へと傘を傾けようと伸ばした手を、
土方はその手を握ることで遮って、これまで通り千鶴が濡れないようにと傘を差す。

「ありがとうございます。屯所に戻ったら熱いお茶をお入れますね。」
「ああそうしてくれ。」

隊士達の目の前を通り過ぎていき、
一つの傘を相合傘をして歩いているせいかそっと寄り添う二人の後姿は近く、
ただただ隊士達は、呆然と言葉を発することなく土方と千鶴を見送っていた。
二人の影が雑踏の中に溶け込んで、見えなくなってから、
隊士の一人が息をすることすら出来なかったのか、大きく息を吐き出した。
それをきっかけに、それぞれが思い思いに口を開いた。

「なんか、すげぇいい雰囲気じゃね?」
「つーか出来てるんじゃねえのか?」
「だよな!じゃなきゃ、副長があんな甘い顔するかよ。」
「誰にも入れない雰囲気だったよな。」
「副長って優しいんだな。俺、初めて知ったよ。」
「でもお似合いだったと思わないか?あの二人。」

隊士の一人が発した言葉に、そこにいた誰もが大きく頷いた。

さて、その後、雨が止んでから屯所に帰った隊士達。
自分達のそんな姿が平隊士に見られてるとはかけらにも思ってなかった土方と千鶴は、
その後平隊士達の間で二人が付き合っているという噂がまことしやかに流れ、
それが沖田はじめ幹部達の耳に入りからかわれたのは、また別のお話。





お題「夕立と相合傘」
お題サイト「4m.a」様よりお借りしました。






3232hitかこ様より
「屯所時代で無自覚に甘甘な雰囲気を出している二人を偶然目撃してしまった平隊士達の話」

この度はリクエストありがとうございました!お待たせして申し訳ありませんでした。
ご期待に応えられたえしょうか…。なんかすいません!ありがとうございました。
土方さんの確信犯的行動から、二人は相合傘をしたのでした(笑)
勿論、土方さん狙ってますね、1本しか傘を買ってない時点で。
こんなお話になってすいません。駄文でよろしければお持ち帰りいただけたら幸いです。
感想や苦情いただけたらと思います。というか、書き直しいつでも受けますのでおしゃってください!
また、お暇なときにでも、サイトに来ていただけたらと思います。