朝目が覚めて、恥ずかしくらい近くにある、綺麗な土方の寝顔と、
包むよう温かさの土方の腕の中、寄り添う距離にあるそのことに、
未だ千鶴は照れくささと恥ずかしさと緊張を覚えてしまう。
でも最近はもう一つ感じる想いがある。

朝餉の準備に家事にと土方より早く起きる千鶴にとって、だからこの時間は好きだった。
少しの間、土方の寝顔を見ていた千鶴は、
小さくクスッと微笑んで、居心地がいい土方の腕の中から出ようとした。
布団から立ち上がろうと腰を浮かせた時だった。

「ひゃあっ!」

腕を引っ張られて、再び布団の中。
土方は寝てるとばかり思っていた千鶴にとっては、まさに予想外の出来事。
千鶴を抱き込む土方の腕には、それまでとは違い、確かな力が込もっている。
おそるおそる、上目で土方を見上げれば、
まるで合わせたように土方の瞼がゆっくりと開き、菫色な瞳が千鶴を見遣る。

「おはよう、千鶴。」

いつもと変わらぬその挨拶に、
抗議の言葉も咎める言葉も何かしら言おうとした言葉全て消え、

「お、おはようございます…。」

と挨拶を返した。

「ったく変な声出しやがって。」

楽しそうに笑った土方の言葉に、千鶴が恥ずかしそうに表情を変える。

「あれは歳三さんが急に引っ張るからっ。」
「おまえがどこか行こうとするからだろう。」

先ほど土方の変わらぬ挨拶に消えた言葉を思い出したのか、
千鶴は頬を膨らませて恨めしげに土方を睨んだ。

「朝餉の準備が出来ないじゃないですか。いきなら引っ張られれば誰でも驚きます。
 突然なにをするんですか。離していただかないと困りますっ。」

穏やかな普段の口調とは違い、叱るようなきつさが含まれているが、
土方にはさして効果はなく、やんわりと受け流してしまう。
寧ろ、土方にとっては愛らしいとしか言いようがないので、千鶴からすれば逆効果。

「困るってなにがだ?」
「あの、だから、朝餉の準備が」
「別に今すぐやらなきゃならねえことじゃねえだろ。」
「歳三さんがやられてることもそうじゃないですか。」

千鶴が手で土方の胸板を押し、その腕の中から逃れようとすればするだけ、土方は腕の力を強くする。

「俺より朝餉の方が大事なのか?」

揶揄するような口調で土方が千鶴に聞く。
勿論、土方は千鶴がなんと答えるかわかって聞いているのだ。
千鶴とて、答えは一つ。

「…も、勿論歳三さんですけど……。」

その顔は少し赤い。

「だったら構わねえだろ。」

綺麗に笑って言う土方に、千鶴は何も言えなくなってしまう。

「もう…。なんだか子供みたいです。」

観念した千鶴は大人しく土方の腕の中に納まる。

「そいうおまえこそ、さっき人の寝顔見ながら嬉しそうというか幸せそうに笑ってただろ。」
「っ!」

楽しそうに土方は千鶴を見ている。

「ええええ起きてたんですか?!って見てたんですか?!」

慌てふためく千鶴の顔は一瞬にして耳まで真っ赤になった。

「どうせおまえのことだ、幸せだなぁとか思ってたんだろ。」
「どうしてわかるんですか。」

気恥ずかしさに顔を俯かせていた千鶴の頤を土方は掬い、
自分の方へ向かせ、その栗色の瞳に自分を映させる。
口元は綺麗な弧を描く。

「俺も同じだからな。」
「それって…。」
「夜中ふと目が覚めて隣で寝る千鶴の寝顔見て、ああ幸せだなって。そう思うと自然と笑みが零れてな。」

だからたとえ目を瞑っててもおまえがどんな風に笑ったかわかるんだ
そう話す土方の顔はとても優しい微笑みがともっていた。

「そしたら千鶴のそんな表情(かお)が見てえなと思ったし、離すのが惜しい。
 それに、幸せは二人で分かち合うもんだろ?」

その言葉に、千鶴が少し目を潤ませながらも柔らかく微笑った。

「起きたらおまえがいないのはなかなか寂しいもんがあるしな。」

困ったように笑いながら言った土方の珍しい本音に、
千鶴が何かを言おうとしたが、それは音にならず互いの唇に中に閉じ込められた。

「歳三さん、幸せです。」

千鶴の笑顔は、土方の寝顔を見て笑った、その笑顔だ。

「俺もだよ、千鶴。」

毎日感じる千鶴のもう一つ感じること、それはそう【幸せ】だ。
今こうして土方と共に交わす睦み言のような時間も。
寝顔を見るその時間も。
まだ少しぎこちないその動作で土方に擦り寄れば、背中に回された腕でしっかり抱き締められる。

「せっかく早く起きたのに、また寝ちゃいそうです。」

気持ちよくて、という千鶴に土方は満足げだ。

「いいじゃねえか。」
「朝餉が昼餉になってしまいます。」
「まだそれを言うか。」

呆れたようなため息がかかり、千鶴はくすぐったくて身を捩る。
その隙にと土方は首筋に唇を落とし、千鶴の耳に寄せる。

「俺はおまえがいれば十分だ。朝餉はいらねえよ。」

直接囁くように言われた言葉に千鶴が再び耳まで赤く染めたのは言うまでもない。





お題「公園5題」02.くすぐったい時間
お題サイト「恋したくなるお題」様よりお借りしました。






5000hit蒼宙様より
「ED後甘々」

この度はリクエストありがとうございました!お待たせして申し訳ありません
ご期待に応えられたえしょうか…。なんかすいません!ありがとうございました。
甘々に仕上がってるといいのですが…足りなかったらすいません!
こんなお話になってすいません。駄文でよろしければお持ち帰りいただけたら幸いです。
感想や苦情いただけたらと思います。というか、書き直しいつでも受けますのでおしゃってください!
また、お暇なときにでも、サイトに来ていただけたらと思います。