それまで読んでいた本を閉じて、窓の外を眺めた。
ここは教科準備室。
他の仕事があるのか、私がここに来た時はもう土方先生の姿はなかった。
「幸せの青い鳥…。」
この前借りた『青い鳥』という童話を読んで先生を待っていたのだけど、それも読み終わってしまった。
「私にとっての青い鳥って何だろう…?」
――”青い鳥は実は身近にありました”――
青い鳥、それはつまり幸せ……
「土方先生…。」
私が、幸せだと感じるのは土方先生の傍にいる時で、
幸せだと思えるのはその愛情を感じている時だから、やっぱりそうなんだと思う。
この童話の通り、私の青い鳥、つまり幸せはやっぱり身近にあったんだ。
土方先生にとっての青い鳥はなんだろう?
それが私だったら――…
「どうした?」
そんなことを考えていると突然、声がして
「ひゃあっ!」
思わず驚いて、変な声が出てしまった。
「何変な声出してんだ。」
「だって土方先生が突然声かけるんですもん。」
「俺は何度か呼んだが?
なのに、おまえは気付いちゃいねえし、かと思えば恋しそうに俺の名を呼びやがる。」
先生の言葉に、かぁっと顔が熱くなるのがわかった。
恥ずかしい…。
先生は口元にニヤリと笑みを浮かべてる。
「そ、そそんな恋しそうだなんてそんなことは…!」
「なんだ、違うのか。」
恥ずかしさから思いっきり否定したら、先生は今度は悲しそうな顔をする。
「違わなくもないですけど…。」
先生がいなくて寂しかったのも本当だった。
「けど、なんだ?」
その声にからかいの色が含まれていることに気付いて、
「先生、からかわないで下さい。」
と抗議してみる。
すると、土方先生はどこかおかしそうに笑い、椅子に座ると、私の頬に手を添えてきた。
「おまえは本当に。」
「何ですか?」
「からかいがいがあるよな。」
触れるか触れないかで、頬を撫でる先生の手が気持ちいい。
「どういう意味ですか?」
「可愛いやつだと思ってよ。」
目を細めた先生の顔が、とても綺麗で、
温かな愛情を感じる視線に、また頬の熱があがるのがわかった。
ドクン、と鼓動が跳ねる。
先生の顔を直視出来なくなって、思わず視線を逸らしてしまった。
「千鶴?」
わかりきった声で先生が呼びかける。
「あの、」
私は、いたたまれず声をあげた。
視線を逸らした筈なのに、先生が私の顔を覗き込んでいる。
「ん?」
さっきまで疑問に思っていたことをぶつけてみた。
「先生にとっての青い鳥はなんですか?」
「は?」
先生にとっては、全くもって予想外の質問だったんだと思う。
目を見開いて、瞬かせた。
でも、すぐにその表情が元に戻る。
「青い鳥ねえ…。」
遠くを見るように視線を投げ、それが私へと返ってくる。
先生はなんと答えるのだろう。
「千鶴、おまえはどうだ?千鶴の青い鳥はどうなんだ?」
土方先生は答えではなく、私に聞き返してきた。
「私、ですか?」
なんだか答えるのが急に気恥ずかしくなってきた。
答えは決まってるんだけど。
先生の目は、真っ直ぐ私を見ていて逃げられない。
わかっていて聞いている、そんな気がしたけど。
私が答えないと、多分先生は答えてくれない。
「そう、おまえの青い鳥が知りたい。」
そっと囁くように答えを強請られる。
「土方先生…です。」
私が答えると、先生は満足げに笑った。
「俺の青い鳥はおまえだよ。千鶴。」
「よかった…。」
ほしかった答えが返ってきて、安心したら先生に笑われてしまう。
「なんだ、そんなことが心配だったのか?」
「幸せの青い鳥は実は身近にいるっていうじゃないですか。
だから、先生の青い鳥が私だったらいいなってそう思ったんです。」
「幸せの青い鳥ってんのは、身近にいるんだろ?
だったらおまえ以外にいるわけねえだろ。
おまえが傍にいることが何よりも幸せなんだよ。」
先生も同じ気持ちだった、それが凄く嬉しくて
「なに泣いてんだよ。」
言葉と裏腹に口調はとても優しかった。
今度はしっかり頬に触れて、泣いてしまったんだと気付いた。
そっと、土方先生は涙を拭ってくれる。
「嬉しかったんです、先生も同じ気持ちだったのが。だからつい」
泣いてしまいました、と笑えばまるで慰めるように、優しい口付けを私にくれた。
土方先生がいつまでも私の青い鳥だったら、きっとこれから先も幸せなんだと思う。
だからずっと傍にいてほしい。
そして、私も先生の傍にずっといたい。
私が先生の青い鳥で幸せであったら、それもきっと私の幸せだから。
「ずっと傍にいろよ?俺のところか勝手に飛び立つのは許さねえからな。」
「土方先生もです。」
「俺がおまえから離れられるわけねえだろ。」
「私もです。先生のお傍以外考えられませんから。」
言ってしまって恥ずかしくなって、目を逸らす。
その視界の端に、柔らかく笑った土方先生の顔が映った気がした。
「ま、俺が離すわけもねえがな。」
ずっと、ずっと、傍に。
――”青い鳥は実は身近にありました”――
1900hit水城様より
「甘めなお話で」(設定はお任せ)
この度はリクエストありがとうございました!
ご期待に応えられたえしょうか…。なんかすいません!ありがとうございました。
甘くなってるでしょうか?甘く甘くを心がけたんですが、甘くないような自信です…あわわ
こんなお話になってすいません。駄文でよろしければお持ち帰りいただけたら幸いです。
感想や苦情いただけたらと思います。というか、書き直しいつでも受けますのでおしゃってください!
また、お暇なときにでも、サイトに来ていただけたらと思います。