気が付けば夢中で手を伸ばしていた。
その指先にあなたの温もりが触れないかと。
かつては追いかけてばかりいたあなたの背中。
私はついその背中に手を伸ばしてしていた。

時代が巡って、また再会した今も、何故か私は手を伸ばしている。
あなたの背中に。
時折重なって見える。
浅葱の隊服、黒の洋装、幸せな背中、
いつだって私を守り、儚い命と幸せをくれたかつての背中。
遠く感じていたその背中は今はもう近いというのに。

「千鶴?…ったく。」

振り向いて私の手を取る土方先生に、
昔の【歳三さん】と呼んでいた和服姿が重なって見た気がした。
痛くない程度に、それでもしっかりと握って、
もう片方の手で私の目に浮かんでいたんだろう涙を拭ってくれた。
いつもこうしてくれた。
私の手をしっかり握って、それから涙を拭ってくれて、それから――

「相変わらず泣き虫だな。」

そう、私を抱き締めてくれる。
ぎゅっと先生の背中に腕を回してジャケットを握った。
きっと先生は気付いている。
だから、昔も【歳三さん】も気付いてた。

今もまだ少し遠いその背中。
先生と生徒だから。
でも、昔より近くて、いつでも触れる距離にあなたはいて、
いつ終えるか知れない命ではない。
だけど、魂がそうさせるのか、私はあなたに手を伸ばしてしまう。
離れたくなくて、傍にいたくて。

「大丈夫だ、俺はおまえの傍から離れねえよ。
なんだって俺がおまえから離れられねえんだ。」
「はい…ありがとうございます。私も、先生を手放せません。」

夢中で伸ばした指の先に、
触れたのはあなたの温かくて優しくて幸せなくらいの確かな愛。








「都忘れ」/GLAY 歌詞引用