いつからだろうその声に鋭さが和らぐようになったのは。
優しさが宿り、気遣いが隠れるようになったのは。
――千鶴?
そのうち、愛情に溢れて、歳三さんにそう呼ばれるようになったことが、
とても嬉しくてくすぐったかった。
時に、からかいを含みようになったのは確かこの頃。
――千鶴…。
本音を告げてくれるようになってからは、悲しい色を纏うこともあった。
夜には、翻弄し、痺れる甘さと熱をくれる声。
「千鶴。」
私は歳三さんに名前を呼ばれるだけで、幸せを感じる。
今みたいに、歳三さんの温もりをすぐ傍で感じながら呼ばれると。
「歳三さん。」
「どうした?」
「なんでもありません。」
「なんだそりゃ。」
だから同じくらい歳三さんの名前を呼ぶことが好きだった。
愛する人の名前を呼んで、答えてくれる。
それだけなのに、やっぱり幸せを感じる。
「歳三さん、好きです。」
珍しく自分から想いを紡ぐと、歳三さんは優しく笑う。
「俺も好きだよ、千鶴。」
甘く囁かれた言葉は心を満たし、頬を熱くする。
「はい。」
そして、笑顔にさせてくれる。
愛しそうに目を細めた歳三さんは、私を抱き寄せた。
「千鶴。」
今、歳三さんは沢山の優しさと沢山の愛情と
沢山の甘さと沢山の慈しみとで私の名を呼ぶ。
ほんの少し熱情。
唇と唇が重なる。
愛する人に名前を呼ばれるだけでこんなにも幸せになれるのだと、私は知った。
これからも、沢山「千鶴」と呼ばれたらと思う。
私も長く、愛情を込めて「歳三さん」って呼びたいから。
毎日の中にある幸せ。
それを大事に、大事に、していきましょうね、歳三さん。