たまには、と休日だったその日、土方と千鶴は久しぶりにデートをしていた。
といっても、教師と生徒である二人は、恋人らしく手を繋ぐことも出来ず、ただ、並んで歩いていた。
その帰り道、遠く雷が鳴った。
週末を利用して止まっている土方の家までもう少し。
小さく聞こえた雷鳴に、千鶴が小さく肩を動かし、土方の顔に笑みが心なしか浮かんだように思えた。
と、雨粒がポツっと落ちてきた。

「あ、雨…。」
「降ってきやがった。」

そうもいう間に、雨脚は強くなり、雷は近づく。

「千鶴、走れ!」

土方は言うが早く、近くの店の軒下へと入っていった。
千鶴も慌ててその後を追う。
二人が軒下へと逃げ込んだと同時に、ザーッと激しい音を立てて、雨は本降りとなった。
目の前が青白く光ったと同時に雷鳴が一際大きく鳴った。
先ほどから雷が鳴ると同じくして震えていた千鶴が、
同じように一際大きく体を震わせ、土方との距離を詰める。

「ったく。」

土方は、困ったように、でも、愛しさのある笑顔で息を吐き、すぐ傍にある千鶴の手を取った。
握れば、その手が微かに震えていたのがわかる。

「土方先生?!」
「こういう時素直に甘えたっていいんだけどな。」
「だって、ここ外ですし…。」

雷鳴を怖がるそぶりを見せながらも、遠慮か照れか恥ずかしさか、
離そうとする千鶴の手を引き、隙間無いくらい二人の体を引き寄せる。
繋いだ手は、そんな二人の影に隠れて外からは見えない。

「これならいいだろ?」
「…ありがとうございます。」

安心したような千鶴の表情に、土方は柔らかく笑った。
千鶴がその手をぎゅうと握り返した。

やがて、雨が上がり、虹が空にあがる。
晴れた空がキラキラと目の前の水溜りを映し出していた。

「おまえ、雷怖かったんだな。」

楽しそうに笑う土方に、千鶴がいじけたように頬を膨らませて反論する。

「いけませんか?」
「いや、可愛いなと思ってよ。」

平然という土方に、千鶴の顔が一気に赤くなった。
土方は、そんな千鶴に愛しそうに目を細めた。

「帰るか。」
「はい。」

危なっかしいから、と土方は繋いだ手を離すことなく、
二人は土方の家への道を再び歩き出していた。


――見えない角度で手を握り締め





お題「教師と生徒の恋模様」24.
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