初めは二組引いていた布団。
距離がなくなり、やがて土方さんの腕に抱き寄せられ、一組になり、夫婦になり。
そうして過ぎていく時間は、この地の短い夏のごとく、あっという間で。
秋の長夜には、寄り添い睦言を交わすように、
自然と小さくなる囁き声で、他愛ない話で笑いあった
深まる秋の朝、なかなか土方さんが離してくれなくて、
朝ご飯がお昼ご飯になってしまったり。
寒い夜はこうして早くに布団に入り、互いに身を寄せる。
「千鶴、寒くないか?」
「土方さんこそ、大丈夫ですか?」
「ああ、千鶴がいるからな。」
あっという間に時は過ぎ、初雪降りたこの地は長い冬の始まりを告げた。
未だ慣れない、ううん、きっと慣れることのない、二人の暮らし以上に、
夫婦となりより甘く優しく柔らかくなった土方さんの言葉や行動にはもっと慣れなくて。
今夜も雪が散らついていた。
「初めて土方さんと冬を過ごしますね。」
一瞬、ん?と顔をした土方さんは、それでもすぐに
私の言いたいことがわかったのか、眦を下げてそっと微笑む。
「そうだな。」
正確に言えば、蝦夷での冬は2度目。
でも、あの時はこんな関係なんかじゃなく、
私は土方さんの小姓で、平穏だったとはいえ、戦の最中だった。
夫婦として迎える、二人だけの冬は初めてだった。
「そろそろ冬支度しないとですね。」
「本格的に積もる前に全部やっちまわないとな。」
「そうですね。」
雪深いこの地。
やることは沢山ある。
「明日晴れるなら薪割しちまうか。」
「お願いします。今夜の雪はあまり積もらないでしょうから。」
「積もったからっておまえは雪かきすんなよ。」
「でも、私だけ何もしないわけには…。」
「千鶴は、あったかい茶と上手い飯を作ってくれりゃ
それでいいんだよ。おまえにしか出来ねえことだろう?」
「はいっ。」
「それに、おまえがなんでもかんでもやってしまうと、
旦那としちゃ俺の面子がたたねえよ。」
冗談交じりに言われた言葉。
旦那、という言葉に胸が顔が熱くなる。
「なんだ、おまえまだ慣れねえのか。」
笑う揶揄する土方さんの声が優しく響き。
俯いてしまった顔が、土方さんの手によって戻されてしまう。
かち合う熱い視線が、とても愛しく照れくさい。
「だって…。」
「ま、そういうところも可愛いが。そろそろ慣れてほしいところだな、ん?」
耐え切れなくて視線だけ逸らそうとすれば、甘く囁かれてそれさえさせてくれない。
「千鶴。」
「ずるいです、土方さんは。」
そっと近付く温もりに目を閉じれば、優しい柔らかな感触に酔いしれる。
唇を離せばぎゅっと強く抱き締められた。
その身にされるがまま寄せれば、トクントクンと聞こえる土方さんの鼓動。
あまりにも気持ちよくて落ち着く安らぎに眠ってしまいそう。
冬の寒さを感じないほど、土方さんの腕の中はあったかくて。
この冬はこうして、二人寄り添ってぬくもりを分け合って過ごしていくんだろうな。
「あったけえな。」
「はい、とても。」
髪を梳くように撫でる土方さんの繰り返される指先。
「こうしてれば、厳しい冬を乗り越えられそうですね。」
「季節関係なくおまえを離さねえよ。」
「ずっと傍でこうしててくださいね。」
「当たり前だ。」
そしてもう一度。
―その温もりに吸い寄せられた―
土方さんの温もりがあれば、それで。
「千鶴がいれば十分だ。」
聞いた声は夢心地。