ゆるゆると過ごす、二人だけの時間は、
今まで激動だった日々が嘘のように穏やかで、優しくて、甘いものだった。
ただ好きな人の傍にいらりれる幸せ。
こんな日々来るとは思ってなんていなかった。
土方さんもまた、新選組時代からは想像つかないほど、穏やかで、優しくて、甘くなった。
こちらが困ってしまう位、愛されてるんだなと実感できてしまう。



函館戦争で負った傷も癒え、すっかり元気な姿を取り戻した頃。

「千鶴、散歩行かねえか。」

よく晴れた日、眩しげに空を見上げてそう誘われた。

「そうですね。」

土方さんに続いて家を出る。
よく晴れた青空が私たちを出迎えてくれた。

「いいお天気ですね。」
「そうだな。」

爽やかな風を受けて歩く。
ただそれだけなのに、土方さんが一緒っていうだけで、こんなにも楽しい。
無言のまま、二人の足音だけが耳に心地よく響く。
ふと、土方さんが私の方を振り返る。
差し出された手。

「ほら、千鶴。」

戸惑う私に、土方さんは言う。

「もう俺の小姓じゃねえんだ。お前は俺の妻だろ。後ろじゃなくて隣に来い。」

その言葉が嬉しくて、そして恥ずかしくて。

「あの…。」
「手繋ぐってんだよ、早くしろ。」
「あ、はい!」

そっと差し出された手に自分の手を重ねる。
すぐに握り返された。
今まで半歩後ろを歩いてた。
初めてではないけど、まだやっぱり今までの癖が抜けなくて。
繋がれた手に促されるまま、土方さんの隣に並ぶ。
近い距離。
見上げればすぐそこに土方さんの顔がある。
自分の顔が熱くなる感覚。
まもなく視線を外す。

「どうした?」
「いえ…なんでもありません…。」

隣に並んだだけで変わる景色。
二人で見る世界はこんなにも綺麗なんだと改めて実感する。
繋がれた手もくすぐったい。
こんな些細な事でも幸せなんて。

「土方さん、私、幸せです。」
「俺もだよ、千鶴。」



ゆるゆると過ごす、二人の時間は、
これからもきっと、穏やかで、優しくて、甘いもので。
そんな時間をこの人と過ごせる幸せ。
その穏やかで、優しくて、甘い笑顔が出来るだけ
長い時間見られますように、そう心の中で願いながら。
隣に並ぶ愛する人との日々を愛していこうとそう思う。