現代にはない竹の書簡まである。
「それ」
「柊の忘れ物です」
さっきまで現代に来ていたのだ。
「また来るつもりなんですよ」
「わざと忘れたみたいに言うのね」
「柊は俺達の邪魔をしたいんですよ、させませんけどね」
そんな風に笑うのは反則だと思うな。
*今日のお題は『マグカップ』『Web』『書簡』
何故か先生方と半ば強引にやることになったチェスに勝った俺は
美味しいと評判なスイーツ店のクーポンを貰った。
選んだのは以前千尋が食べたいと言っていた赤いラズベリーが一杯乗ったタルト。
千尋が喜ぶ姿が目に浮かんでつい俺まで笑顔になる。
早く帰らなければ。
嬉しいそうな千尋の笑顔を早く見たい。
*今日のお題は『チェス』『タルト』『赤』
帰りに千尋と立ち寄ったのは葦原の草原。
「千尋はここがお気に入りですね」
「だって風早と出逢った場所よ?」
千尋が幸せそうに笑う。
だから頬に手で触れれば
「ねぇ風早」
と呼ばれた。
顔を近づけたその時触れたもの。
「これからもずっと傍にいてね」
「勿論です。ずっと千尋の傍にいるつもりですから」
*オススメのキス題。シチュ:草むら、表情:「幸せそうな表情」、ポイント:「甘い雰囲気」、「自分からしようと思ったら奪われた」
「風早の手って大きいよね」
俺の手と自分の手を合わせていた千尋がため息混じりに言う。
「不満ですか」
「いつまでも追いつかないなぁって」
まだ幼い頃にも同じように手の大きさを比べて同じようなことを言っていたっけ。
「だってあなたを守る手ですから」
千尋の手をそのまま自分の手で包むように握った。
*『手の大きさを比べっこしている』『風千』
「千尋起きて下さい、千尋」
声が届いたのか目を擦りながら起きた。
「風早…?」
「おはよう、千尋」
「おはよう、もしかして寝坊しちゃった?」
「いいえ、俺が千尋に逢いたかっただけです」
そう素直に告げたら
「そんなさらっと言わないでよ」
千尋が枕で顔を隠してしまった。
「可愛いですね」
俺の姫は
*『ベッドで「おはよう」と言っている』『風千』
「千尋、大丈夫ですよ」
私が何かを怖がったり何かに怯えたり悲しくて泣いたりすると
いつも風早がそう言って抱き締めてくれた。
だから私も何かあると風早に甘えてしまう。
迷惑かけてるんじゃと風早に聞いたら
「千尋が甘えてくれると嬉しいんです」
と笑顔で返された。
「だって千尋が笑ってくれますから」
*『「大丈夫だよ」と相手を抱き締めている』『風千』
「風早!」
家を出ようとしたら千尋に呼び止められた。
「一緒に行っていい?」
「いいですよ」
「よかった」
千尋が嬉しそうに笑う。
「嬉しそうですね」
「風早と一緒に行くの久々だもの。そういう風早も嬉しそうよ」
朝から千尋といられるわけですからね。
「同じ理由ですよ」
今日はいい一日になりそうです。
*『一緒に登校している』『風千』
あなたは今頃立派な王として日々執務に取り組まれていることでしょう。
千尋、あなたならきっと出来ます。
俺がお育てした姫ですから。
『ねぇ風早、私達ずっと一緒にいるのよね?』
ふいに思い出したあなたの声。
俺はいつも千尋の傍にいますよ。
離れていても心は離れていませんからね。
*
「ねぇ風早」
「はい?」
「そんな風に見なくてもちゃんとやってるよ」
「わかってますよ」
「そう見られてるとやりにくいんだけど…」
「俺の姫は可愛いなぁと思いまして」
「…風早は照れくさいこと普通に言うのね」
「だって本当のことですから。千尋、止まってます」
また傍にいられることが嬉しいのですよ
*
「風早ー!」
普段ならすぐに現れる風早が来ない。
「風早?」
私達と同じ人間になった風早が前みたいには出来ないのはわかってる。
だけど今日は珍しく静か。
行き着いたのは風早の部屋。
「風早入るよー。…あ」
机で書物を手に眠る風早の姿。
神から人になっても変わらないんだね。
風早が風早でよかったよ。
*
「まさかもう一度貴方と桜が見られるなんて思いませんでした」
「私もだよ」
時折吹く風が心地いい。
くたんと身を預ける千尋の重みを感じながら
満開に咲き誇った桜を見上げる。
「ねぇ風早」
「何ですか?」
「こういうのを幸せって言うのかな」
「そうですね」
幸せ以外に形容しがたい時間をそうして共有する
*
「俺の役目だったんですが」
風早の手がかつてあった場所へと触れる。
「他の人にとられるよりマシですね」
「風早ってそんなに嫉妬深かったけ?」
「俺の姫限定で」
今ある髪に触れ千尋の頬に触れる。
「また伸ばしてくれますか?俺の為に」
「勿論、そのつもりよ」
そよぐ風に紛れて触れるだけのキスをした
*
『千尋』風早の声が聞こえた気がした。
『俺はどんなところにいても貴方の幸せを
願わない日はないんですよ。心は貴方の傍にいますから』
「千尋」
次に呼ばれたのは那岐だった。
足を止めた私を怪訝そうに見ている。
「今風早の声が聞こえたの」
「ふぅん。いいから行くよ」
大事に胸にしまって遠い貴方を想う
*
「大丈夫ですよ、千尋。俺がついていますから」
大きな手に握られた。
そこから大きな安心感が伝わってくる。
そう、風早がいてくれれば大丈夫。
「俺が嘘をついたことがありましたか?」
「ううん、ないわ。風早のこと信じてるから」
何よりも雄弁に繋がれた手が伝え合うの。
風早にもたれて寄りかかった。
*
「千尋」
名前を呼びながら千尋の身体を後ろから抱き寄せる。
少し驚いた千尋の体が小さく跳ね、それから俺の方へと体を委ねてくれる。
「もうびっくりするじゃない」
「すいません。千尋があまり構ってくれないので寂しくて」
「別に放ってたわけじゃ…」
「わかってます。ただ傍にいたいだけですから」
*